【2007年11月】
湯原温泉郷は適温、良質のアルカリ単純泉が自噴する私のお気に入りエリアのひとつ。これまでも湯原温泉砂湯、下湯原温泉、真賀温泉など紹介してきたが、泉質にこだわる人にはもうひとつ超おすすめの温泉がある。それが郷緑温泉。
湯原ICを降りて料金所を出ると突き当たりがT字路。左に行くと真賀温泉、勝山方面。右に行くと湯原温泉、蒜山方面。郷緑温泉は、右に進み500m先を川に沿って左折。さらに約1km進むと郷緑温泉という縦長のサインが見えてくる。そこから左側川向こうを見ると古くて大きな古民家が見える。それが郷緑温泉。橋を左折して到着。
近くで見ると城を思わせるような石垣が印象的。石段を登っていくと、玄関がある。蕎麦屋の入口のような(^^;暖簾がかかっている。
「ごめんくださーい。」
奥から、おばあちゃんが出てこられた。
「お風呂入らせていただけますか?」
「いま、ご夫婦が入とられるけど、あと5分くらいで出られますけ、待ったらええ。」
ここの風呂は、ひとつしかない。だから、1組づつしか入れず、原則貸切風呂状態になる。たまに、同性のお客様で、お互いがいいよと言えば、一緒に入る事もある。
入浴料500円を払い、応接椅子で待つ。
壁には芸能人が宿泊に来たり、取材に来た写真がずらりと並んでいる。秘湯ブームで有名になった温泉。特に関西からのお客様が多いとのこと。湯原ICから2kmで秘湯ムードに浸れるのも人気の理由だろう。
ほどなくお風呂が空き、さっそく入らせていただいた。
浴槽は、ふたつあって、手前が小さく、奥が大きい。どちらも御影石で作られた綺麗な風呂。まずは体を洗った後、湯舟に向かう。ここの風呂は、必ず奥の大きな風呂から入るのが常道である。
大きな浴槽は、足下湧出の源泉掛け流し。足下は平らではなく、自然の岩盤。大きな亀裂から渾々と湯が湧いてくる。真賀温泉の幕湯や奥津温泉の奥津荘鍵湯、東和楼などと同様、自然湧出の大地の恵み。足場の良いところを確認してゆっくり浸かる。湯は無色透明のアルカリ単純泉。透明度が非常に高く、足元の青緑色の岩盤がきれいに透けて見える。
ph9.1というアルカリ泉なので湯の感触はつるつるすべすべ。泉温は34℃のぬるい湯なので、のぼせることはない。静かに浸かっていると、湯がぬるぬると肌を滑って流れていく。時々、ポコっと気泡が湧き出てくる。肌にも僅かだが気泡が付着する。足下湧出ならではの、湯の鮮度を物語る。ビールに例えれば、気が抜けていない証拠である。あふれる湯は、浴槽をオーバーフローしてせせらぎとなり、排水溝に消えていく。湧出量も相当なものだ。ダイナミックに岩盤から湧き出す湯、泉質、鮮度と温泉好きにとってはたまらなく魅力的な湯である。
となりの小さな浴槽は41℃の加熱浴槽。こちらは足下湧出ではなく、底は平ら。寒い時期にはここで体を温めてから上がる。以前紹介した島根県の千原温泉と同じ考え方。私は元来ぬる湯好きなのと、ここの湯は34℃の割には、何故か湯上がりのポカポカ感を感じるのでこの日(11月)は入らなかった。真冬だと、さすがに入ります。
ここの風呂は日帰りだと30分の時間制限がある。事実上貸切湯なので多くの人に入ってもらうためには仕方ないが、極上の湯だけに、後ろ髪を引かれるように上がらなければならない。ここの湯を楽しむためには、宿泊すべきだと思う。
風呂上がりに、ご主人、奥様としばしお話しする。
建物は相当古く、築150年。手直ししながら何とか維持しているとの事。ご年配のご夫婦ふたりで全てを切り盛りしている。だから、宿泊客は1日7室15人が限度だそうだ。
夕食は、スッポンのフルコースが定番。鮮度の高い温泉を利用してスッポンを養殖している。男性には精力剤、女性にはコラーゲンたっぷりの魅力的な食材。
「今年は木の実が豊作。イノシシもよう肥えとるじゃろ。」とご主人。
11月中旬からご主人はイノシシ狩りに出かけるそうだ。獲ったイノシシは冬場に向けてボタン鍋の食材となる。宿泊代はひとり1万円程度とのこと。
至福の温泉と、素朴なもてなし。ここは、「癒し」の空間だと思う。
ご夫婦がいつまでもお元気で、この貴重な温泉宿を維持していただきたいものだ。
郷緑館
住所 岡山県真庭市本庄712
電話 0867-62-2261
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■日帰り入浴について
入浴料 大人500円 小人300円
入浴時間 10:00~16:00
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