混浴エピソード 東郷・谷水旅館 2
*** 前回より続く ***
女性は2mほど離れた斜向かいの位置に浸かった。満月に照らされて外灯がなくても互いの顔がはっきり見える。
「旅行で来はったんですか。」
「いえ。残念ながら、仕事ですよ。」
「おひとりで?」
「そうです。」
「お仕事で、ひとりで温泉に泊まるって珍しいですね。」
「そうかもしれませんね。」
「・・・もしかして小説家とか?」
「そんなに知的に見えます?」
「そうでもないか・・・。」
「・・・フォローになってないですよ。」
結構人なつこいというか、屈託なく話しかけてくる。まったりタイムどころではない。こうなれば女性と混浴という状況を最大限楽しもう。男は、少し悪戯することにした。
「最近、温泉はどこか行った?」
「有馬温泉はよく行くけど。陶泉御所坊とか。」
「おお、いい宿にお泊まりですね。有馬はお湯もいいし。」
「でも、ここみたいな鄙びた宿も気兼ねがなくて好き。・・・お気に入りの温泉ってあります?」
「うーん。いくつかあるけど。純粋に一番感動したのは平内海中温泉かな?」
「それ、どこ?」
「屋久島。波打ち際の岩の間から硫黄泉が湧いていて、潮が引くと湯船ができるという・・・」
「それ、テレビで見たことある。すっごく良さそうですよね。」
「最高だよ。目の前は太平洋。回りは何もない大自然。大きな波が寄せてきて岩礁にぶつかりながらだんだん小さくなって最後にちょろっと湯船に入ってくる。一定のリズムで繰り返すんだ。」
「行ってみたーい。」
「そこは、自然のままだから、湯船も混浴。脱衣場もなくて、男も女もみんな岩の陰で適当に脱いで入るんだ。」
「えーメチャ恥ずかしいやん。」
「それが不思議なほど恥ずかしくないんだ。俺が行ったときも男女が5~6人はいたけどみんなタオル1枚で入ってたよ。たぶん、自然に囲まれたあの雰囲気がそうするんだと思う。それと、みんな裸だったら恥ずかしくないんだ。」
「なんか信じられへん。」
「ホントだよ。その時、パジェロに乗った男女4人グループが来て、水着のまま入ってきたんだ。水着での入浴は禁止なんだけどね。その時、自分が裸の時に、裸でない奴がいたら恥ずかしくなるってわかったんだ。みんなもそうみたいで、特に女の子はみんな上がってしまったんだ。」
「それってあるかも。」
「今だって恥ずかしくないと言ったら嘘になるかな。」
男はさらっと言っていたずらっぽい視線を送った。女性は見つめ返してにこっと微笑んだ。
「・・・そう来たか。そのために平内海中温泉の話したんや。」
「成り行きだよ。あなたの質問に答えただけ。」
女性は立ち上がって湯船の縁に腰掛けた。浴衣を着ているとはいえ、濡れていては体のラインは隠さない。男は視線を横にそらし、やがて星空を見上げた。湯船から出た女性から視線をそらすのは混浴マナーの基本である。
「この前、湯原温泉の八景ってホテルに泊まったんや。目の前に有名な河原の露天風呂があった。」女性が話し始めた。
「西の横綱って呼ばれている砂湯だね。」男は視線をはずしたまま相槌を入れる。
「そう。夜遅く、若い女の子が2人、フェイスタオルだけで入ってた。他に誰もいなかったし。」
「あそこは八景から丸見えでしょ?勇気あるなあ。」
「そうとも思ったけど、気持ちよさそうだった。あなたは男性やからわからへんと思うけど、バスタオル巻いてると、メチャ重い、ずれる、張り付くで、決して気持ちようはないんやで。」
「へえ、そんなもんか。でも、わかるような気がする。」
「そん時もうちはよう入らへんかった。でもホントはなんもなしで入るんが一番気持ちええんや。」
女性はそう言うと立ち上がって湯船の中を歩き出した。男は星空を見上げたままだが、その気配は感じていた。
「・・・脱いじゃおうかな。」ぽつりと女性が呟いた。
*** 次回に続く ***
【お詫び】
先月中旬、義母が倒れて妻は実家へ。普段、靴下の収納場所も知らない亭主はパニック状態で、ついついブログの更新間隔が開いてしまいました。
メールで様子伺い頂きました皆様、ありがとうございました。
普段ご来訪いただいている皆様、ご心配をかけ申し訳ございませんでした。
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コメント
ご無沙汰しております。
お身内のご心配事、心よりお見舞い申し上げます。
私も父親の入院などがあり、時々読ませていただいてはおりましたが、コメントはしばらくご無沙汰しておりました。
混浴エピソードも続きが気になりますが、(笑)気長に待たせていただきます。
投稿: 安芸浪漫 | 2007年5月 5日 (土) 20時16分
■安芸浪漫様
多忙にかまけて、コメントのチェックが遅れていました。申し訳ないです。
1回完結のコラムでない時にこんな事になったため、すっきりしなくて申し訳なく思っています。
なるべく早く仕上げたいと思いますので今しばらくお待ちください。
投稿: 温泉トトロ | 2007年5月10日 (木) 19時30分
トトロさん、ご心配ですね。お見舞い申し上げます。
先日はアドバイスありがとうございました。
GW明け、奥道後に早速行ってみました。
今まで存在は知っていたのですが、イメージとして古い大型ホテル、くらいにしか思っていませんでしたが、湯はおっしゃるとおり素晴らしく、ふたりとも大満足でした。加熱掛け流しだそうですが、あれだけ大量の湯を沸かして掛け流すのは大変でしょうね。
貸切風呂は超おすすめです。渓流を望むロケーションと広くて新しくて気品があってゆったり過ごせる雰囲気は、大人のカップルには最高です。文章は苦手なのでうまく表現できませんが、おひとり温泉行脚のお好きそうな(失礼!)トトロさんも、ここは是非奥様と行かれる事をおすすめします。
投稿: hama | 2007年5月16日 (水) 21時15分
■hamaさん、ご来訪ありがとうございます。
奥道後は、加熱といっても、源泉温度は40℃近い湯ですから、僅かな加熱で済むと思います。
貸切風呂は、入ってもないのに紹介して、まるで実験台にしたみたいですが、良かったそうで何よりです。ひとり旅が好きなわけではなく、周囲に温泉好きが少ないだけなのですが・・・。お言葉に従い、次回行くときは大人のカップルで参りませう。
投稿: 温泉 | 2007年5月17日 (木) 20時58分
ご無沙汰してます!
(ココでは、ですが(笑)
「…脱いじゃおうかな」の続きが
すっげぇ~気になる!(笑)
って、ココは、そゆうところじゃなかったですねw
それはそうと…
靴下の場所くらい知っときなさいょ?
まぁ、120点満点の嫁サンだから、
しょうがないか?(笑)
ぁ、言っちゃマズかったかなぁ?w
( ̄∇ ̄*)ゞデヘ
投稿: 博多娘 | 2007年5月19日 (土) 01時57分
■博多娘さん、お久しぶりです。
皆様のコメントで、締め切りに追われる作家の気持ちが100分の1くらい分かったような気がします(汗)。
妻の不在で、私も少しは家の事をやらなきゃと思いましたが、どーも中学生の長女の成長の方が早いみたいで、私は未だにアイロンがけもできません。
夫婦間の力関係はビミョーなバランスの上に成り立ってます(笑)
言っちゃマズかったかも。(; ̄ー ̄A
投稿: 温泉トトロ | 2007年5月19日 (土) 21時24分